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PSI緊急対応ガイドライン

29 September, 2016
Source: 
PSI

自然災害、伝染病や世界的な流行病、戦争や紛争(以下まとめて「緊急事態」と呼ぶ)が発生すると、コミュニティーと公共サービス労働者、特に一次対応者と現場労働者は重大な困難に直面する。緊急事態は、緊縮財政や予算削減、民営化、アウトソーシング、人員不足、訓練を受けた正規職員の不足などといった「人災」の及ぼす負のインパクトによって一層深刻化する。

気候変動

気候変動により、異常気象(ハリケーンやトルネード、森林火災、熱波や寒波、洪水や干ばつ)の頻度と深刻さが増しており、人の居住地域、特に都市部で発生すると、災害が引き起こされる。また気候の変動は、ジカ熱やマラリア、デング熱、水系感染症などの病気や伝染病の拡大を助長している。全体的にみて、人命と財産の損失は急速に増大している。多数の国連機関を含めた様々な組織や、民間企業経営者、投資家が緊急防災に関心を寄せている。公共サービス労働組合は、気候に関する自らの取り組みと緊急時の取り組みを連携させる必要がある。

紛争

紛争は拡大し、またその性質を変化させている。これまでの紛争は国家間で生じていたが、現在我々は国内紛争とテロ攻撃の増大を目の当たりにしている。紛争下では、特に保健医療従事者を中心とする一次対応者に国連の規程や条約で規定されている保護が与えられることが至上命題である。市民の保護が最優先であり、食糧、水道、保健、エネルギー、教育、輸送、住居などの不可欠なサービスを保障することは平時より困難になる。PSIは、一般市民と公共サービスの両方が「正統な」ターゲットとなっている現状を強く非難する。

移民と難民

各種の緊急事態が、それぞれのタイプに固有の特殊事情を伴いつつ発生した結果として、我々は現在、ますます増大する難民と移民の波を目の当たりにしている。これらの「被害者」は極度に不安定な状況におかれており、家を追われ、身分証明書や財産を持たずに国境を超えることも少なくない。また移民と難民の移動は、受け入れる側のコミュニティーや公共サービスにとっても重荷となる。移民と難民の権利に関するPSIの取り組みについても、緊急時の取り組みと連携させるべきである。

危機対応におけるPSIの主な焦点は、加盟組織が事前の準備段階と事後の復興段階の両方で、政策に影響力を行使しうる立場を確保できるよう手助けを行うことにある。PSIは、公共サービス労働者に関する労働組合の取り組みを以下の側面から支援したい。すなわち、1. 人命を救助し財産を守るという職務を遂行する上で、健康・安全面における必要以上のリスクにさらされないようにする、2. コミュニティーに必要な保護を提供するために必要な人員数が確保され、適切な装備が支給され、訓練が受けられるようにする、3. 危機の後に、より強力で強靱な労働組合を構築し、公正かつ平等な社会を支える質の高い公共サービスに向けたアドボカシーを進めることができるようにする。

緊急事態と災害への備え

PSIは、緊急事態への対処では事前の備えと準備、そして防止策がきわめて重要であると認識している。災害発生前の事前の備えこそが、死傷者と被害を最小化する最善の方法である。また事前の備えは迅速な復興の一助ともなる。労働組合は、一次対応者と現場労働者がこれまでの緊急事態の経験(他の都市や他国の労働組合の経験を含む)に基づいて事前の準備状況を評価できるよう彼らをサポートできなければならない。これは労働者が適切な訓練と実習を受けられるようにするためのもので、点検項目には個人用防護具の利用可能性、非難訓練を含めたコミュニティーで必要な準備、各施設における適切な緊急時計画、電気やインターネットが利用できなくても機能する緊急連絡手段などが含まれる。緊急事態に備えるためのチェックリストは複雑なものになるかもしれないが、緊急事態下でのサービス継続には我々の専門知識が役に立つ可能性があるため、労働者と労働組合はチェックリストの精緻化、定期的な改訂、管理に積極的に関与すべきである。また我々は、異なる機関のあいだの調整を含めて、民間企業や他の関連する利害関係者と共に、コミュニティーや地域全体での備えをサポートすべきである。

緊急事態に対応する

PSIは、より強力で強靱な公共サービスを創出するために、再建・復興(あるいは「ビルド・バック・ベター」)に労働組合の主張を反映させていくことが、我々労働組合とその組合員、そして彼らのコミュニティーを守るために不可欠であると信じている。その際に労働組合は、個々の危機を準備態勢における欠点を洗い出す契機とし、また災害後の復興期には労働組合および質の高い公共サービスに関わる課題のアドボカシーを進める必要がある。労働組合は、一次対応者と現場労働者が危機後の意思決定に参加する際に信頼を勝ち取れるようにするため、彼らが人命救助とインフラや財産の保護に最高水準のプロ意識を発揮し、献身的に行動することを示す必要がある。

労働組合は、復興に関するあらゆる重要な意思決定への参加実現に取り組むべきである。

Ÿ   一次対応者と現場労働者の労働組合権が尊重されるようにする(再建には瓦礫の撤去や被害を受けたインフラの復旧など、危険な作業が多数含まれる)

Ÿ   将来起こりうる緊急事態への対応を含めて、労働者が自らの仕事に安全かつ効果的に従事できるようにするため、労働者の訓練、安全設備やツール等への系統的な投資を訴える

Ÿ   保健医療サービスを含め、一次対応者が従事するあらゆるサービスで十分な数の人員を確保する

Ÿ   警官や消防士の例に倣い、緊急時における地方公務員の就業規則を策定する

Ÿ   救助活動や復興事業に従事する労働者のメンタルヘルスの問題に対処する(心的外傷後ストレス障害)

Ÿ   熟練専門家に取って代わる不安定雇用の労働者やボランティアに過度に依存することを避ける

Ÿ   準備態勢を強化するためのひとつの方策として、部門の異なる一次対応者および行政機関のあいだの連携を確保する

Ÿ   コミュニティーとの協力を強化し、あらゆる再建プログラムが女性や子ども、高齢者、障碍者、移民、難民など最も脆弱な人々に対処するものであるようにする

Ÿ   質の高い公共サービスを維持する。公的インフラ、公衆衛生制度、その他のサービスに投資する

Ÿ   復興期における民間資本の侵入は、公共サービスの民営化に結びつく可能性があり、警戒を怠らないようにする

PSIと労働組合のアドボカシー

上述のすべての活動において、政策決定者を対象とする継続的なアドボカシー活動(地方自治体、各地方政府、各国政府、世界レベルの政策決定者を含む)が必要であり、また職場における団体交渉では新たな領域(施設の「グリーン化」や緊急避難計画の策定など)の検討が求められるだろう。

一次対応者と現場労働者は、繰り返し自らの生命を危険にさらし、緊急時対応に関する深い知識を身に着けているにも関わらず、現時点では労働者と労働組合が緊急時計画の策定や意思決定に参加することはまれである。世界規模でみると、そもそも「労働者」が考慮の対象となる限りにおいて、そのほとんどの場合にボランティア活動に焦点が当てられている。したがってPSIと加盟組織は、十分な準備が整い訓練を受けた専門的な公共部門労働者の役割に関する大々的な啓発活動に従事する必要がある。

PSIは、労働組合が災害後のアセスメントを実施し、組合員の意見を収集し、分析を進め、アドボカシーに従事するのを支援するための具体的なツールを開発するつもりである[1]。我々はまた、緊急時・災害時に活躍する労働者の認知度を高め、彼らが「ビルド・バック・ベター」の過程を先導する議員、公務員、コミュニティーから一層の信頼を得られるようにするための活動を支援する。これには組合員の「英雄的」行為について人々の証言を集めることも含まれる。

災害救援活動:PSIは救済機関ではない。我々は、遠方の被災地へと人員や物資を輸送するための専門能力を有していないし、そういった人員や物資を効率的かつ公平、安全に配分することもできない。こういった任務は、ロジスティックスの具体的な専門能力を持つ様々な専門機関が担うべきものである。PSIは、加盟組織と組合員の家族も緊急時の治療や支援を受けられるよう、これらの機関と共に提言を行っていくつもりである。我々は、多くの組合が自らの資金を迅速な災害支援に振り向けたいと望むであろうことを理解している。そのような状況におけるPSIの役割は、被災国の労働組合と連絡を取ることにある。また我々は、自らも被災者となりうる公共部門労働者が、緊急時にあらゆる必要不可欠なサービスを中断することなく継続的に提供するよう期待されていることを認識する必要がある。

 
 



[1] 労働組合向けのツールには以下が含まれる。労働組合としての全般的な戦略の策定、職場単位の災害対応メカニズムの強みと弱点に関する証拠(証言、写真、メディア、分析)の収集整理、組合員・経営者側・コミュニティーを対象とする啓発活動の企画と実施、メディア対策とアウトリーチ、政府の復興活動への提言。