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国が「税競争」をすべきというのは誤り

29 September 2016
エリー・メイ・オヘーガン、ニコラス・シャクソン著 - 2013年4月18日(木)発行のガーディアン紙に掲載

経済の成功をサポートするためには、国は「税競争」力をつけるべきとの神話が語り継がれてきた。なるほど、合理的な話に聞こえる。企業間の競争は、企業が常により良い製品とサービスをより良い価格で提供する姿勢にさせ、また、そうした圧力をかけるのに有効であると、我々は教えられている。

しかし問題がある。市場における企業間の競争は、税をめぐる各国の「競争」とは経済上、似ても似つかないのである。これらは全く異なる、強力な経済活動なのだ。

税の「競争」を支持するために使われた理論的議論が最初に登場したのは、1956年に経済学者のチャールズ・ティバウトが書いた論文である。彼はその中で、グローバル化した世界では、公共サービスができる限り低い税金で、最も効率的に運営される国に人々が移住するのは当然であると議論している。この状況では、よりお金をかけずにより良い公共サービスを運営していくことで、国が他国と「競争」し、すべてが有機的に改善されるはずである。しかし、税金をめぐる状況が少しでも変われば、子どもに学校を辞めさせ、外国に移住しようという人々など、そういるものではない。税金の専門家でなくとも、この理論がいかにばかげているかはわかるだろう。

「競争」は、実はどこを見ても有害なものであることがわかる。まず、税金の変化に合わせて移動する人々はほとんどいないが、気まぐれな金融資本は実際に動く。政府は、移動できる資本に対する税率を下げて、「競争」する(つまり、金持ちへの課税が軽減)。金持ちに課税しなければ、別のところでその穴埋めをしなければならない。それはどのように行うのだろうか。移動する余裕のない人々、文句を言えない立場の人々に課税するのだ。貧しい人々は最終的に、より多くの税金を払うことになる。

つぎに、税「競争」は大企業にメリットをもたらすが、それは不公平で非生産的である。「競争力」のある税制はどれも租税回避の体質がある。回避方法は、低税率を通して、税金の抜け穴を使った節税などがあるが、こうした節税に与ることができるように、税金専門の高額な弁護士や会計士を雇うことができるのは、通常、大きな多国籍企業だけだろう。多国籍大企業は、オフショア制度を利用して、規模の小さい地元密着型の競争相手を追い込む。純粋なビジネスの生産性や真のイノベーションとは全く関係のない要因でこうしたことが動くのである。

税「競争」は、国と国とが減税を通じてビジネスを奪い合う経済戦争である。例えば米国では、この問題がどれだけひどいものであったかを、 ニューヨーク・タイムズ紙が、詳しく報じている

「アメリカン航空をめぐる、先ごろの(各州による)入札戦争には(中略)、90都市が集まった。アメリカン航空は、ホテルで交渉を行い、代表者は入札額を比べながらフロアからフロアへと走り回った。イリノイ州知事のジム・エドガーが中断を求めたが、多くの州は応じなかったと彼は語っている」

先ごろの調査では、カンサス州とミズーリ州の2州は、「引き抜き禁止」契約を交わしているにもかかわらず、互いから人材を引き抜くのに少なくとも1億9200万ドルを費やしたことがわかっている。最終的に、カンサス州に流れた雇用が上回ったが、どちらも高いコストを負った。その結末を別の報告書はこう説明している。「米国では、富裕層よりも低中所得層の家庭に高額な納税を強いる逆進的な課税制度が全州にある」と。

高い課税額が、投資と成長を抑圧するとの主張はいまだに多いが、これは果たして本当だろうか。グラフは、豊かな民主主義国のGDP成長率を税収に対してプロットしたものである。経済全体における税収は、日本の29%からデンマークの55%以上まで大きく差はあるものの、成長に対しては明らかな影響はない。ファイナンシャル・タイムズ紙のマーティン・ウルフはこのように結ぶ(有料記事にリンク)――「大差はあっても、経済的なパフォーマンスに影響はないようだ」

各国の最高所得税率についても同様のことが言える。米国の税制に関する公平な分析によると、「最高税率は経済のパイの大きさにほとんど、またはまったく関係ない(中略)が、最高税率の引き下げは、所得分配において最高所得層に所得が集中することと関係があるようだ」。

所得税についてはこの通りだが、資本に対する税率はどうだろうか。果たして国の競争力を高めるのだろうか。ここでも反証がある。しかも説得力がある。資本に対する税率が低ければ、労働者への課税を増やすか、政府の借金を増やすかすることで、穴埋めをしなければならなくなる。ペンシルベニア大学のクリス・サンチリコ教授は新たな研究論文でこう指摘する

「資本収益に対する優遇税制で経済成長を促そうという試みは、同じ屋根のあちら側で、こちら側を修理するようなものである」

最後に、個人投資家は資本に対する減税「競争」にどう反応しているのだろうか。ウォーレン・バフェットがきちんと説明している

「投資家とは60年も付き合ってきたが、キャピタル・ゲイン税率が39.9%だった19761977年でさえ、見込まれる収益にかかる税率を理由に分別ある投資を敬遠する人は見たことがない」

しかも、投資家は整備された道路や、健康で教養のある労働者、法の支配を求める。これらはすべて、税金が支えている。それ以外にも、病人の看護や子どもの教育、弱者のサポートなど、税金の使い道があることを忘れてはならない。政治家が「競争力のある税制」という言い方をするときは、おそらくその意味をわかって言ってはいない。税「競争」は、経済戦争である。ゼロサムゲームよりもたちの悪い、底辺に向かう近隣窮乏化政策なのである。有害以外の何者でもない。

ニュー・エコノミクス財団と税の正義ネットワークの調整のもとで作成されたシリーズの一部

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